| 第五節 王道と写実的表現の台頭 〜絵柄・イメージ分析〜 1950〜60年代にかけて、貸本屋マンガを中心に“劇画ブーム”が起こり、少年マンガ誌もそれを誌面に取り入れていった。「劇画」はこれまでの「笑い」を主眼においたマンガとは違い、青年の社会に対する怒りや、現実的な生活感情をリアルな絵柄で描写ものであった。それだけに少年読者層にはわかりにくく、小中学生をターゲットにした『ジャンプ』は「目もくれなかった」〔後藤広喜前編集長、産経新聞1992年7月6日付け〕わけであるが、「劇画」のリアルな絵柄だけは『ジャンプ』に入り込んできた。 表18は、最近5年間の『ジャンプ』マンガの「絵柄」と「イメージ」を分析したものである。分類は以下のような基準で行った。 表18 『ジャンプ』マンガ 絵柄・イメージ分析( )は% ・絵柄 写実調・・・登場する人物、街、建物などがかなり現実的に描写されているもの。 中間・・・それらが多少ディフォルメされたもの。 ヘタウマ調・・・それらがかなりディフォルメされているもの。 ・イメージ 明るい・・・全体的にスッキリしているもの、しつこさを感じさせないもの、など。 暗い・・・描写が細かく、よく描き込まれているもの、ゴチャゴチャした感のあるもの、ベタ(黒塗り) の多いもの、など。 下品・・・鼻水やよだれ、排泄物などが頻繁に登場するもの、下ネタの多いもの、など。 「絵柄」は、「劇画」にまでは至らない、「中間」がおよそ半分を占めてはいるが、人物などをかなり本物らしく描写した「写実調」も36.3%と全体の3分の1以上を占めていた。このことは四節の「現実性」と関連しているのかもしれない。また、読者層の拡大により、大人の鑑賞にも耐えられるような誌面づくりの結果なのかもしれない。 「イメージ」はスッキリした感じのある「明るい」が6割と多く、「暗い」が3割、「下品」が1割と、6:3:1というバランスであった。マンガが「低俗」といわれる所以である「下品」なイメージであるが、子どもが下品なものに笑いを感じるのは当然であることを考えれば、1割という数字は少なめか、もしくは妥当なラインだとも考えられる。それに健全な感じがある「明るさ」と、ある程度の「暗さ」を混ぜ合わせている。考えようによっては6:3:1は絶妙な配分なのかもしれない。 総合的な結果を見ると、 @「中間−明るい」 (38.7%) 図25 @〜Bの代表的なマンガ
@「中間−明るい」 A「写実調−暗い」 B「写実調−明るい」 となる(図25)。@はいわゆる戦後以降の少年マンガの王道である。“マンガらしさ”がにおう絵柄と、健全なイメージ。このあたりは昔から変わっていない点である。AとBの違いであるが、Aは「写実」でもかなり重い印象を持つ方であり、Bは軽い感覚の、どちらかというと“ポップ”な印象と考えるとわかりやすい。注目したいのはこのBである。四節の「現実的な舞台・人間的な能力」と相まって、その写実的ながらも重苦しさを感じさせない軽快な絵柄は年を追うごとに増え、『ジャンプ』の主流になりつつある。 「ヘタウマ調−下品」を一手に担っているのが、1989年(平成元年)に設立された『ギャグキング』から出たマンガ家たちである。4.8%と数値的には少ないが、一つの路線として確立されている。 こう見ると、『ジャンプ』マンガの表現形式も、多岐にわたっていることがわかる。しかしここでも「写実的」な表現が頭角を現し、フィクション性が薄くなっている点見逃せないであろう。 |
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