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| その男は突然に現れました。
まずリング上でフットワークを使い、サークリングしながら相手との距離をとります。かつてプロレスでフットワークを使うレスラーなど皆無でしたから、ボクシングやキックボクシングさながらのムーブに衝撃を受けるわけです。そこから繰り出されるキック攻撃、ローリングソバット。まあ見たことないアプローチですよ。プロレスのキックといえば相手を踏みつけるストンピング系が主流であり、彼のようなしなやかなロー、ミドル、ハイキックは存在しなかったんですね。そしてプロレスの定番である飛び蹴りのドロップキック。これがただのドロップキックではありません。その跳躍力たるやまるでゴムマリが跳ねたような感覚で、その弾力性に目を奪われます。組み合ってから展開されるレスリングムーブも今までにない速さがあり、目まぐるしく動くその姿に釘付けになりました。軽業師のような空中殺法も目を見張るものばかりで、浮いている時間が長い、という言葉が大げさでなく当てはまるような動きをするのです。
これらはプロレスリングにおける革命といってもいいレスリングスタイルでした。そんな彼がプロレスという枠を超えた人気者になるのに多くの時間はいらず、まさに『タイガーフィーバー』ともいうべき社会現象を巻き起こしたわけです。「正義の虎」「ドリームヒーロー」的なキャッチフレーズとともに、彼は絶対的ベビーフェイスとして君臨し、連勝街道をばく進していきました。 ところがですね、私は強烈なアンチタイガーとしてプロレス中継に熱中していました、実は。まだ小学4年生くらいだったと思うのですが、すでに多数派に対して嫌悪感を抱くひねくれ思想が芽生えていまして(笑)、アンチ巨人を筆頭に、強きものが下位のものに倒される構図、というものに快感を求めていたんですね。
日本中を熱狂の渦に巻き込んだタイガーフィーバーですが、その終焉は意外と早かったです。デビューして2年半くらいでしたかね。大人の事情で所属団体である新日本プロレスから去っていきました。当時は大人の事情なんてわからないから、かなり残念でしたね。アンチのくせに、いなくなると寂しいという(笑)。裏を返せば私は彼の実力を認めており、大好きだったんですね、彼が。実際、大学生になってからタイガーマスクのビデオ『猛虎伝説』が発売されたときは、レンタルしてVHSにダビングまでしましたから(笑)。その後それはDVDに再ダビングされるほどお気に入りのタイトルになっています。いやホント、今見ても彼の動きは色あせていないんですよ。初見の方は衝撃を受けますよ、大げさでなく。 佐山タイガーが去った後、その虎のマスクは2世、3世、4世と様々なレスラーに引き継がれていきますが、やっぱりオリジナルの初代・佐山タイガーが一番です。その革命的・革新的レスリングは、なかなか打ち破れないだろうなあ。 (2015年7月24日) |
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